新しいプロジェクトを始める時。新しい人間関係を築く時。
私たちは、その「第一歩」や「第一声」に、どれほどの意識を向けているでしょうか。
物事の成否は、その後の努力だけでなく、実は、その「始まりの秩序」に、大きく左右されるのかもしれません。
その深遠な真理は、私たちの国の、始まりの物語――『古事記』の国生み神話の中に、静かに、しかし明確に記されています。
第一章：始まりの過ち
遥か昔、まだこの国が形を成さず、水に浮かぶ脂のように漂っていた時代。
天つ神は、イザナキノ神（男神）とイザナミノ神（女神）に、神聖な矛を授け、こう命じます。
「この矛で、漂う大地をかき混ぜ、国を固め成せ」と。
二柱の神は、天の浮橋から矛を差し入れ、混沌をかき混ぜると、矛の先から滴る潮が積もり、最初の島「オノゴロ島」が生まれました。
島に降り立った二柱は、まず天の御柱を立て、壮大な宮殿を築きます。そして、互いの身体に、満ちる部分と、満たされない部分があることを認め合い、この二つが結びつくことで、国を生み出すことを誓いました。
二柱は、神聖な柱を巡る儀式を行います。
イザナキは左から、イザナミは右から。そして、出会った場所で、互いを讃え合う。
しかし、その時、女神であるイザナミの方から、先に声をかけてしまいました。
「ああ、なんと素晴らしい殿方でしょう」
「ああ、なんと素晴らしい乙女だろう」
イザナキは、一瞬ためらいます。「女から先に声をかけるのは、吉兆ではない…」と。
しかし、二柱はそのまま結ばれました。
その結果、生まれたのは、骨のない「水蛭子（ひるこ）」。そして、不完全な「淡島」。
国生みは、失敗に終わります。
第二章：秩序の回復
過ちの原因を悟れない二柱は、高天原の神々に、その理由を問いに行きます。
神々の答えは、明快でした。
「女から先に声をかけたことが、不調和の原因である。還りてもう一度、正しくやり直しなさい」と。
二柱は再びオノゴロ島へ戻り、寸分違わず、儀式を繰り返します。
ただし、一つだけを変えて。
今度は、出会った場所で、男神であるイザナキの方から、先に声をかけました。
「ああ、なんと素晴らしい乙女だろう」
「ああ、なんと素晴らしい殿方でしょう」
ただ、それだけでよかったのです。
正しい「順序」を取り戻した二柱の交わりから、淡路島をはじめとする、美しく、豊かな日本の国々が、次々と生まれていきました。
第三章：この神話が、
現代の私たちに教えること
この物語は、単なる古代の神話ではありません。
そこには、現代の私たちの人生、ビジネス、そして人間関係の全てを貫く、三つの普遍的な法則が隠されています。
物事には、従うべき自然な「順序」があります。陰陽の理で言えば、陽（天・男・心・ビジョン）が先に発し、陰（地・女・体・現実）がそれに応える時、物事は最もスムーズに創造されます。これは、決して男女の優劣を語るのではありません。リーダーがビジョンを示し、チームがそれを形にする。心が「こうありたい」と願い、身体がそれに向かって行動する。この根源的な秩序が、調和の第一歩です。
イザナキとイザナミは、失敗の原因を、自らの感情や能力のせいにはしませんでした。彼らは、ただちに専門家（天つ神）の意見を求め、原因を特定し、正しいプロセスで「やり直した」のです。失敗とは、終わりではありません。それは、プロセスに誤りがあったことを教える、貴重なデータに過ぎないのです。
満ちる部分と、満たされない部分。異なる二つのものが、正しい秩序のもとで結びついて初めて、新しい生命（国、プロジェクト、価値）は生まれます。自分にないものを嘆くのではなく、自分とは異なる他者を尊重し、その違いを統合する先にこそ、真の創造があるのです。
終章：あなたの人生の、
「始まり」を整える
この古代の叡智は、あなたの人生やビジネスにおける、強力な羅針盤となります。
今、あなたのプロジェクトや人間関係が、どこか上手くいっていないとしたら。
それは、誰かの能力の問題ではなく、ただ、「始まりの順序」が、少しだけ乱れているだけなのかもしれません。
私たちFOURPILARSは、この陰陽の法則に基づき、あなたの人生における、あらゆる物事の「始まり」を、最も調和の取れた、美しい形に整えるお手伝いをします。
あなたの内なるイザナキ（陽）とイザナミ（陰）のバランスを読み解き、次なる創造を、確かな成功へと導く。
そのための叡智が、ここにあります。
