◆五行の「相生」と「相尅」について
五行には大きく分けて、「相生」と「相尅」という2つの作用(相互関係)があります。簡単に言えば「相生」とは「互いに生じ合う作用」、「相尅」とは「互いに尅し合う作用」のことです。さらにそれぞれ5つの関係があるわけで、簡単に自然現象にたとえて説明すれば「相生」とは、「木は火を生じ、火は土(灰)を生じ、土中からは金(鉱石等)が生じ、金(岩)から水が生じ、水は木を生じ育成する」という原理となっています。また「相尅」とは、「木は根を張って土を尅し、土は堤防となって水を尅し防ぎ、水は火を尅して消し、火は金を尅して溶かす」作用のことを言います。五行図で言えば、「相生」は隣同士の関係であり、「相尅」は1つおいて次の五行との関係となっています。
概ね「相生」は吉作用、「相尅」は凶作用と見ることも出来ますが、そこは四柱推命学の奥深いところで、「相生」必ずしも吉ならず、「相尅」必ずしも凶ならずとなります。却って凶星が生じられること(相生)によって凶作用を増すこともあり、逆に凶星が尅されること(相尅)によって、凶星の凶作用が抑制されることがあるからです。所謂「化凶為吉」「毒を以って毒を制する」「禍転じて福と成す」と言われるようなことがありますので、四柱推命は面白いし奥が深いと言われるものです。
まず「相生(そうせい)」と「相剋(そうこく)」について見ていきましょう!
◆互いに生じ合う関係 相生(そうせい)とは
相生関係とは「相互助長、相互産生」のこと
相手を助けて促進したり育てたりする関係を表します下の図1をご覧ください
【図1】五行図(相生・母子関係)
水→木→火→土→金の順に 右回りに無限に循環 次の相手を育てるように作用します
下の図2をご覧ください
まず[水]から始まり 右へと変化水を吸って[木]が育ち[火]は木によって勢いを増し燃えた灰は[土]の養分となり土の中では養分が固まり[金]を生じさせ金属の表面には[水]が生じます
【図2】相生・母子関係
また、相生関係は “母子関係”ともいわれます。 「我を生む=母」「我が生む=子」を意味し、五行のうちの一行はどれも「母」でありながら「子」でもあります。例えば「木生火(木が火を生む)」においては「木=母」「火=子」の関係ですが「水生木(水が木を生む)」では「水=母」「木=子」の関係になります。それゆえ木は「火の母」「水の子」などとも呼ばれます
図1を「水」から順に矢印の順にみていくと、めぐり巡って相互に「生む関係」「助長する関係」「依存し合う関係」が浮かび上がります。
下記の表は 相生関係とイメージまとめ
相生関係 | イメージ |
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①木生火 | (木は火を生ず) 木は燃えて火を発生させます。これは、火の立場から言えば、火が燃えるのを木が助けてくれることを意味していますし、易理から言えば木は「巽」を意味し、これは「風」でもあり、風(空気)は火の勢いを強めてくれます。また、木の立場から言えば、木の持っているエネルギーが火となって外に放出されることを意味しています。良く取れば木の潜在エネルギーが外に現れて他のものを暖めたり、明るくしたりという貢献をすることでもありますが、木自体からすれば、消耗して自分がエネルギーを失うことでもあります |
②火生土 | (火は土を生ず) 火は燃え尽きれば灰となり土と化します。また、陶磁器などの作業工程などに譬えますと、火は柔らかい土を固めて強固な土(器)としてくれます。又太陽の熱を地面が吸収するという事象に譬えることも出来ます。適度な火と土の関係は良質の陶器などを生み出すこともありますが、過度の火と土の関係では、日照りの為に畑が乾いて、作物を育成することが出来ない土となることもあり、土の用途と性質によって、「火生土」も良く働いたり、悪く働いたりします |
③土生金 | (土は金を生ず) 土中から金(金銀・鉱石・宝石)などが掘り出される事象に譬えることが出来る関係です。良き山は宝の山となって、宝である金を産出することもありますが、過度の土は却って「埋金」と言って、金を土に埋もれさせてしまい、世に出ることが出来なくなることを意味していますので、この「土生金」の相生関係も吉作用となったり、時には逆に凶作用となることさえあります |
④金生水 | (金は水を生ず) 岩間(金)から水が生じることに譬えられ、又は金属の表面に水滴がつくと譬えられることもあります。金の側から見ると「金生水」は金の潜在能力を引き出す作用であり、水の側から見ると、金は水を生み出してくれる「水源」とみなされます |
⑤水生木 | (水は木を生ず) 水は木を育成する作用に譬えられます。只、水が多すぎると流木となって木が流されてしまうことになりますので、適当の水であってこそ木を育成する吉作用となるものです |
◆互いを抑え合う関係 相剋(そうこく)とは
相克関係とは「相互抑制、相互制約」のこと「相剋」とは、ある物事がほかの物事を制約したり抑制したりする関係を表します。(「剋」には「勝つ」という意味がある)
五行全体のバランスを保つために行き過ぎることがないよう互いに抑え合います。
相手を調整する関係。図2をご覧ください
【図2】五行図(相剋)
[水]は[火]を消す力があり 勢いを調整
[木]は[土]の養分を吸い 根をはり勢いを調整
[火]は[金]を溶かすことで調整
[土]は[水]の流れを止めます
[金]は[木]を切り落とし調整このように、より勢いを増す相生関係と調整し合う相克関係がうまく組み合わさり自然界のバランスが取れています。私たちもこのバランスに沿って生きることで、スムーズに生きられると考えます。
図2を矢印の順に見ていくと、巡り巡って相互に「抑制する関係」が浮かび上がります
下記の表は 相剋関係とイメージまとめ
相剋関係 | イメージ |
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①木尅土 | (木は土を抑える) 木は土中に根を張ることによって、土を押しのけ土の養分を吸収します。木(植物)が盛んに繁茂し過ぎると、土は痩せてしまいます。逆に、土が強すぎて硬くなっても、木が根をはることが出来ず、木も反尅作用を受けて、枯れてしまいます。 |
②土尅水 | (土は水を抑える) 土は堤防となって水が氾濫するのを防ぐ作用をします。但し、土が強すぎたり、悪い土であると、水は濁ってしまうことになります。また逆に、水の勢いが強すぎると、土も反尅作用を受けて、堤防が破れて水が氾濫してしまうこともあります。 |
③水尅火 | (水は火を抑える) 水は火を尅して消す作用をします。適当な水は火の凶勢を抑えてくれ、水も火の反尅作用によって暖められることもありますが、強すぎる水は完全に火を消してしまって、火の効用までもなくしてしまうこともあります。また、強すぎる火に水を注ぐことによって、却って消すどころか爆発させてしまうことさえもありますので、他の相尅と違い火と水の相尅関係は注意して見てゆかないと、危険なことがあります。 |
④火尅金 | (火は金を抑える) 火は金を尅して金属を熔かし変形させる作用をします。金が善用されるには適当の火で鍛錬されることが大切です。金が器をなし、名刀ともなる為には、火の勢いが金の力量に対して、適度である必要がありますが、火の勢いが強すぎれば鋼も完全に熔けてしまい、器(名刀)をなすことが出来ません。 |
⑤金尅木 | (金は木を抑える) 金は木を尅し、斧や鋸となって木を伐採します。木は金によって伐採されて、切り刻まれることによって、人の役に立つ家や家具等の有用の材となることができます。切り刻まれ過ぎては木は死んでしまい、有用の材となることが出来ません。逆に木が堅過ぎれば、木の反尅作用を受けて、金(斧や鋸)も折れてしまうことがあります。 |
木火土金水のバランスの崩れ方1⃣
◆互いに抑えすぎてしまう関係 相乗(そうじょう)とは
相乗とは「相剋関係」の抑制が強くなり過ぎる・相手を抑え過ぎるパターン
「相乗」の「乗」には、「強いものが弱いものを虐げる・凌駕する」などの意味があります。「相乗」とは、五行のうちの「剋している一行」が相手を強く抑えすぎてしまい、過度な相剋反応が起きることをいいます。「相乗」を引き起こす原因として、五行のうちの一行が、「1.強くなりすぎる」「2.弱くなりすぎる」の2つのケースが考えられます。また命理学では、木火土金水のいずれかが強くなりすぎることを「太過(たいか)」、弱くなりすぎることを「不及(ふきゅう)」と言います。
【ケース1:一方の太過による相乗】
五行のなかの一行が強くなりすぎたため、相手を抑えすぎて弱まらせてしまうケースです。「木火土金水」のイメージで、このケースを考えてみましょう。木が強くなりすぎたとき、土は栄養を摂られすぎて痩せてしまいます。このように木が強くなりすぎて、木が土を過剰に抑える状態、これを「木乗土(もくじょうど)」といいます。
【ケース2:一方の不及による相乗】
五行のなかの一行が弱まり通常の抑制にすら耐えられなくなって、さらに衰弱したケースです。これも例を出してイメージしてみましょう。栄養が豊かでない土は、木の正常範囲内での栄養摂取でも耐えられずに、さらに土が衰弱していきます。このように、土が弱まり相対的に木が土を抑える力が強くなった状態、これを「土虚木乗(どきょもくじょう)」といいます。
[水]の勢いがありすぎると
[火]が少なくなりすぎます
[火]が少ないので
[水]の勢いが更に増してしまう
このような状態を言います
木火土金水のバランスの崩れ方2⃣
◆相侮(そうぶ)の関係
相侮とは「相剋関係」に逆方向の抑制が起きる・逆に自分が抑制されているパターン
五行の中のある一行が、本来ならば抑えられる(剋される)立場であるにもかかわらず、逆に相手を侮るかのように抑制してしまうことをいいます。「相侮」の「侮」は、「侮られる、バカにされる」などの意味があります。「反侮(はんぶ)」とも呼ばれます。「相侮」を引き起こす原因としては、五行のうちの一行が「1.強くなりすぎる」「2.弱くなりすぎる」の以下の2つのケースが考えられます。
【ケース3:一方の太過による相侮】
五行の中の、ある一行が強くなりすぎたため、本来は抑制される立場であるにもかかわらず逆に相手を抑制してしまうケースです。
「木火土金水」のイメージで、このケースを考えてみましょう。例えば正常状態なら木は金に剋される(樹木は斧に切り倒される)関係にありますが、木が強くなりすぎると斧では太刀打ちできなくなり、逆に斧が折れることもあります。このように木が強くなりすぎて、木が金を抑制してしまうことを「木侮金(もくぶきん)」といいます。
【ケース4:一方の不及による相侮】
五行の中のある一行が非常に弱まったため、相手を抑制するどころか逆に反抗されてしまうケースです。
これも例でイメージしてみましょう。正常状態なら木は金に剋される(樹木は斧に切り倒される)関係にありますが、斧が刃こぼれして錆びついていると木は切り倒せず、逆に斧が折れることもあります。このように、金が弱くなりすぎて、木が金を抑制してしまうことを「金虚木侮(きんきょもくぶ)」といいます。
「相乗」と「相侮」はどちらも「相剋」の異常パターン、つまり正常な抑制関係が壊れてしまった状態のことをいいます。
相乗と相剋のまとめ
相乗と相侮にはつながりがあります。相乗が起きたために相侮が起こることがあり、また相侮が起きたために相乗が起こることもあります。
例えば「木が強すぎると、土を抑制し過ぎて弱らせる(木乗土)」だけでなく、同時に「金が木を抑制できず逆に侮られる(木侮金)」という状態にもなります。その結果として金が弱くなれば、金は火に乗じられる状態になってしまいます。
このように、どれか一行が強くなりすぎても、どれか一行が弱くなりすぎても、相乗と相侮が同時に起こります。
ひとたび一箇所のバランスが崩れると、上記のように連鎖して他も乱れていくのは、五行のそれぞれが相生・相剋のトータルバランスの上で関わりあっているためです。
◆比和(ひわ)の関係
比和とは
水と水、木と木、火と火のように同じ属性のもの同士の関係を言います
同じ気が重なるとその気はますます盛んになります
ただし その結果が良い場合にはますます良くなりますが
悪い場合には悪さが増します
相生によって良い影響がでれば更にパワーアップ
相剋によってパワーバランスが崩れないように保っています
●五行の「気」が多い場合
①「木」の気を多が多い場合、その性質は直にして仁心を抱くと言われます。人に暖かさを与える面が利点です。
②「火」の気が多い場合、カットきやすく猛烈ですが、礼節を尊ぶと言われます。派手さがどうしても出てしまいます。原色が似合う人が多いようです。
③「土」の気が多い場合、寛大で和と信を重んじると言われます。人を育み面倒を見るという意味になります。
④「金」の気が多い場合、少し神経質な面はありますが、剛毅果断で、義を重んじると言われます。
⑤「水」の気が多い場合、冷静沈着で智恵があると言われます。悪く言えば人に冷たさを与えてしまう場合があります。