琴(きん)と瑟(しつ)、二つの異なる弦楽器が、一つの完璧なハーモニーを奏でる。
古来より伝わる「琴瑟相和す(きんしつあいわす)」という言葉は、そのような美しい調べになぞらえ、深く響き合う人と人との関係性を讃えてきました。
歳月を重ねるほどに輝きを増す、穏やかで仲睦まじいパートナーシップの姿は、まさにこの言葉を体現しているかのようです。その揺るぎない絆の根源には、果たしていかなる天の采配が隠されているのでしょうか。
四柱推命の世界は、この問いに「天地徳合(てんちとくごう)」という、ひとつの美しい答えを示します。
別名「鴛鴦合(えんおうごう)」とも呼ばれるこの星の配置は、夫婦円満の象徴である鴛鴦(おしどり)の名を冠し、人と人との縁が織りなす「究極の調和」を意味します。それは情熱的な恋というよりも、共に歩むべき「道」のはじまり。魂が安らぎ、深く満たされる、真のパートナーシップの姿です。

Chapter1.天と地が響き合う魂の引力
四柱推命における「鴛鴦合」とは、二人の命式の中核をなす日柱(にっちゅう)において、天の氣である「天干」と、地の氣である「地支」の両方が、まるで引き合うように“合”を成している状態を指します。
天の理(ことわり)と、地の情(こころ)。
その両方が深く共鳴し合うこの関係は、理屈を超えた魂の引力を生み出します。多くを語らずとも互いの心を感じ取り、ごく自然に支え合えるような、穏やかで深い結びつき。それゆえに、鴛鴦合は最も幸いなる縁の一つとされているのです。

Chapter2.陰陽の調和が織りなす「天地徳合」
「天地徳合」というその名が示す通り、この配置は、二つの異なる魂が出逢うことで、新たな質へと昇華される神秘的な化学反応をもたらします。
例えば、不動の山を象徴する「戊(つちのえ)」の人と、静かな恵みの雨を象徴する「癸(みずのと)」の人が出逢う時。頑なだった山肌に柔らかな雨が染み込み、そこから情熱的な「火」のエネルギーが生まれるとされます。それは、個々のままでは生まれ得なかった新たな創造性や表現力となって、二人の人生をあたたかく照らし出すのです。
出逢わなければ得られなかった資質を開花させ、互いの弱さを補い合い、運命の荒波を穏やかに凪いでいく。鴛鴦合とは、二人が一つになることで完成する、最強のパートナーシップとも言えるでしょう。

Chapter3.命式に宿る「内なる鴛鴦合」
この調和のエネルギーは、二人の関係性のみならず、一個人の命式の中にも現れることがあります。その人の本質を示す「日柱」と、社会や心の基盤を示す「月柱」や「時柱」が鴛鴦合を成している場合、それは“内なる鴛鴦合”──つまり、自己の内面において陰陽の調和がとれていることを意味します。
この配置を持つ人は、精神(理)と感情(情)のバランスが取れており、自己矛盾の少ない、穏やかで安定した心を宿します。自らの内に宿る調和が、そのまま外の世界に反映されるかのよう。それは天が授けた、幸福な人生の礎(いしずえ)と言えるでしょう。
Chapter4. 確率1.66%奇跡の縁と組み合わせ
この鴛鴦合という縁が、いかに稀有なものであるか。その確率は、わずか1.66%とも言われます。60干支という膨大な組み合わせの中から、天と地、その両方が完璧に響き合う縁が結ばれる。それは、天文学的な確率の中から選ばれた、まさに奇跡と呼ぶにふさわしい天の采配なのです。

Chapter5.天地徳合となる干支の組み合わせ
ご自身の魂と完璧な調和を奏でる、宿命の組み合わせ。その一覧を以下に示します。
この宇宙のどこかに存在するかもしれない、奇跡の縁に想いを馳せてみてください。
天地徳合の干支組み合わせ60種 一覧表 |
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| 甲子と己丑 | 甲戌と己卯 | 甲申と己巳 | 甲午と己未 | 甲辰と己酉 | 甲寅と己亥 |
| 乙丑と庚子 | 乙亥と庚寅 | 乙酉と庚辰 | 乙未と庚午 | 乙巳と庚申 | 乙卯と庚戌 |
| 丙寅と辛亥 | 丙子と辛丑 | 丙戌と辛卯 | 丙申と辛巳 | 丙午と辛未 | 丙辰と辛酉 |
| 丁卯と壬戌 | 丁丑と壬子 | 丁亥と壬寅 | 丁酉と壬辰 | 丁未と壬午 | 丁巳と壬申 |
| 戊辰と癸酉 | 戊寅と癸亥 | 戊子と癸丑 | 戊戌と癸卯 | 戊申と癸巳 | 戊午と癸未 |
| 己巳と甲申 | 己卯と甲戌 | 己丑と甲子 | 己亥と甲寅 | 己酉と甲辰 | 己未と甲午 |
| 庚午と乙未 | 庚辰と乙酉 | 庚寅と乙亥 | 庚子と乙丑 | 庚戌と乙卯 | 庚申と乙巳 |
| 辛未と丙午 | 辛巳と丙申 | 辛卯と丙戌 | 辛丑と丙子 | 辛亥と丙寅 | 辛酉と丙辰 |
| 壬申と丁巳 | 壬午と丁未 | 壬辰と丁酉 | 壬寅と丁亥 | 壬子と丁丑 | 壬戌と丁卯 |
| 癸酉と戊辰 | 癸未と戊午 | 癸巳と戊申 | 癸卯と戊戌 | 癸丑と戊子 | 癸亥と戊寅 |

Chapter6.『静謐』の鴛鴦合、『覚醒』の天戦地冲
鴛鴦合の対極に位置するのが、魂の衝突と変容を促す「天戦地冲(てんせんちちゅん)」です。
鴛鴦合が、心安らぐ港のような“静謐の縁”であるならば、
天戦地冲は、魂を揺さぶり磨き上げる“覚醒の縁”。
どちらが優れているということではなく、私たちの魂の成長には、そのどちらの季節も必要不可欠です。穏やかな調和の中で愛を育む時期もあれば、激しい葛藤を通して自己の本質と向き合う時期もある。それらすべてが、天が私たちに与えた、尊い縁の形なのです。

Final Chapter.ご縁は天の采配と人の愛で育むもの
たとえ鴛鴦合という最上の縁に恵まれたとしても、相手への敬意や感謝を忘れれば、その絆もいつかは色褪せてしまうでしょう。逆に、天戦地冲のような激しい縁であっても、互いを深く理解し、尊重し合う努力を重ねることで、誰よりも揺るぎない愛を育むことは可能です。
最も大切なのは、「自らの命(めい)を知り、相手の命(めい)を尊ぶ心」。
天が結んだ縁という名の糸を、人の愛という温もりで丁寧に、そして丹念に織り上げていく──。
真の幸福と調和は、その営みの中にこそ、生まれるのです。
